放課後の教室で、ぼくはただボンヤリと天井を見上げていた。
もう夕焼けが顔を出し、他の生徒はもう帰ってしまったのだろう、学校内はしいんとして静かだ。
「もう帰ろう…」
誰へとも言わず呟き、鞄をとって席を立つ。
その途端、目の前の扉が開いた。
人は、予想外の出来事に出くわすと動けなくなるものだ。ぼくの足は、警戒と動揺で固まってしまっている。
そこには、一人の少女がいた。
見た目からして5~6歳だろう、髪は肩のあたりまで伸びていて、毛先は内側に向いている。薄い水色のワンピースを着たその幼女は無表情で、相変わらず動けないぼくに近づいてくる。そして、ニッコリと笑って背負っていたリュックを肩からおろした。
それはクジラを模しており、それなのに何故か目つきが悪く牙も尖っており、獰猛そうな印象を与えられた。
何なんだ、この子は。足が固まっている理由に、恐怖が追加された瞬間だった。
「・・・あの・・・?」
ぼくがようやっと絞り出した声を無視し、その子はクジラの口についているファスナーをゆっくりと開いた。
「お久し振りです・・・鰻くん」
ぼくの名前を呟き、クジラリュックから何かを取り出したその子。その手には、手錠のような・・・いや、手錠が握られていた。何故幼女のリュックからそんなものが?と思ったが、すぐにそんな考えは消え、真っ先に逃走本能が働いた。
逃げたのだ。すぐそこにあった窓から飛び降りたのだ、身の危険を感じて、身の危険をおかしてまで。何よりも、あの子に恐れて。
「なにやってんですか・・・死ぬに決まってるのに。昔と変わりませんね、鰻くんってば」
走馬灯を見ていたぼくの背後から、そんな声が聞こえた。

つづく?

まず、たべちゃんごめん。そして読んでくれた方ありがとうございます。
好評であれば続きますが、ご意見ご感想が一切なければ泣きながら放置します。
ご意見ご感想はコメントにて。
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